
ウブドの渓谷に浮かぶ“天空の宿”|星のやバリで心解き放つ2泊3日
渡辺 由布子
- 2025年10月08日
「神々の島」と形容される、インドネシアの人気観光地・バリ島。海と山、動と静を同時に味わえるのが魅力の一つでもあります。
バリ島中部に位置するウブドは、緑深い自然に囲まれたアユン川の渓谷やライステラス(棚田)、古代の寺院、壮大なウブド王宮、伝統的なバリ舞踊やバリ絵画などで知られ、古き良きバリ文化が今もなお根付いています。ビーチとは対照的に、静寂と癒しを求める人々に長年愛されてきました。
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知られざるウブドに出逢う旅

そんなウブドの東側、熱帯の樹々が生い茂るバリ島本来の美しい自然が広がり、バリ神話に語り継がれる聖なる川「プクリサン川」が流れる渓谷の上に、2017年、星のやブランドの海外1軒目として「星のやバリ」が誕生しました。
コンセプトは “The Unknown Ubud(知られざるウブドに出逢う)”。

周辺に存在するいくつかの集落が織り成す景観に溶け込むように設計された、全室プライベート感あふれるスイート仕様のリゾート。約3ヘクタールの敷地には、渓谷に浮かぶガセボ、川を模したプール、渓谷を望むダイニング、ウブドのダイナミックな自然や芸術文化に日本の美意識が融合した、唯一無二の空間です。
日常からそっと距離を置いて、自分と向き合う2泊3日。リトリート、伝統文化体験、ウェルネスプログラム、そして美食—
ゆるりと流れる時間の中で五感が静かに目覚めていくよう。そんな「星のやバリ」での滞在記を1日ごとに綴っていきます。
星のやバリ 2泊3日モデルスケジュール

- Day1
- 15:00 チェックイン @フロント・お部屋
- 15:30 – 16:30 アフターヌーン タぺ・モヒート @カフェ・ガゼボ
- 17:00 バティック・サヤ (ろうけつ染め体験) @パブリック・ガゼボ
- 18:00 バレ・サケパット(サンセット・カクテル) @カフェ・ガゼボ

- Day2
- 07:20~08:20 朝のあぜ道散歩 @近隣のライスフィールド
- 08:30 – 空中ガゼボ朝食 @カフェ・ガゼボ
- 10:00 モーニングウェダン @カフェ・ガゼボ
- 12:30 – 13:30 チャミラン・ガゼボ (アフタヌーン・ティー) @カフェ・ガゼボ
- 14:00 – 16:00 アロマトリートメント@スパ
- 18:00 – 夕食 @ダイニング

- Day3
- 07:00~07:30 ウブドの谷の深呼吸 (ストレッチ・プログラム) @ウェルネス・ガゼボ
- 08:00 – 朝食 @ダイニング
- 10:00 – 11:00 バリニーズの手仕事体験 @レセプション
- 12:00 チェックアウト @レセプション
DAY1|渓谷のヴィラで始まる非日常
15:00| 星のやバリ到着

バリ・ングラライ国際空港から車で約90分、渋滞に巻き込まれると2時間以上のロングドライブに。街の喧騒を抜け、田園風景と深い森に囲まれたウブドの高台へ辿り着くと、まず現れるのは厳かなセキュリティゲート。さらに進むと目の前に聳えるバリ寺院を思わせる石彫りの門をくぐれば、そこはもう非日常への入り口。
エントランスで迎えてくれたのは、伝統衣装に身を包んだスタッフの笑顔とガムランの生演奏、ほんのり甘いフランジパニの香り。
レセプションで冷えたウェルカムティーをいただきながら、長旅の疲れがすっと溶けていくのを感じます。
15:30| チェックイン

客室に案内される道すがら、目の前に広がる鬱蒼としたジャングルとそこに浮かぶガゼボの絶景にまず圧倒されて、生い茂る木々の匂いや小川のせせらぎが五感を刺激する演出も星のやならでは。

全30室、個性溢れる3タイプのプライベートヴィラのうち、今回は「ヴィラ・ジャラク」に滞在。

石畳の小径を進み、扉を開ければ、高い天井と木の温もりが広がるリビング、その奥にはキングサイズベッドを配した寝室。窓の向こうにはウブドの渓谷が織り成す壮大な景色が広がります。

バスルームには大きなバスタブとシャワーブース、アメニティも充実。客室のテラスからプールアクセス可能。水浴びだけでなく、心地よい風を感じながら読書や昼寝など思い思いの過ごし方が叶います。

滞在中は別荘感覚で、誰にも邪魔されないプライベート感を満喫。パブリックエリアから近く、フラットな造りのため、小さなお子さんやご年配のゲストでもストレスなく過ごせるはず。
16:00|アフタヌーン タぺ・モヒート

甘くて冷たい“タぺ(発酵キャッサバ)”のモヒートを片手に、深さ170mの渓谷にせり出すように建つ「カフェ・ガゼボ」でのんびり過ごす午後。渓谷から吹き抜ける風が五感をゆるめてくれます。
17:00|バティック・サヤ体験(ろうけつ染め)

インドネシア伝統の「バティック・サヤ」体験のワークショップに参加。溶かした蝋で模様を描いて染め上げる布アートは、世界に一つだけの作品に。

筆が布を走る感覚に夢中になるうちに自然と心まで解き放たれていく、ある種のマインドフルネスのような体験に。
18:00| バレ・サケパット(サンセット・カクテル)

夕暮れ時のカクテルタイム。バリの伝承や食材にインスパイアされたオリジナルカクテルやモクテル、スナックが振る舞われます。どの一口にもバリにまつわる物語が詰まっていて、沈みゆく太陽と共に心が静かに解けていくよう。朧月を眺めながらゆるやかに夜を迎えます。
Day2:大地とつながる朝。癒しと美食の午後
07:20〜08:20|あぜ道散歩

少し早起きして朝の光に包まれながら、地元ガイドと共にウブドのライス・フィールドを散策。バリの原風景が残る地で、朝露に濡れた稲穂の間を静かに歩きながら、土の香り、動物の鳴き声、働く人々の笑顔に触れて、この島の素朴で温かい日常を垣間見るひと時。ほんの45分の散策は心をゆるやかに整えてくれる時間に。
08:30|空中ガゼボ朝食

まるでジャングルの上に浮かぶような不思議な空間「カフェ・ガゼボ」で味わう朝食は格別。竹で編んだ篭に彩り良く盛り付け
られた料理を食べる伝統的なスタイル「ティラハン」を体験。鳥のさえずりと谷を渡る風に包まれながら、地元食材を使った繊細な料理が身体に沁み渡ります。
10:00|モーニングウェダン(バリ薬膳ドリンク)

バリの伝統的なハーブドリンク「ウェダン」。この地に伝わるレシピを取り入れた、ジンジャーやシナモンのやさしい香りが、散歩や朝食の後の体を内側から温めほっと一息。
12:30〜13:30|チャミラン・ガゼボのアフタヌーンティー

昼下がりには緑に囲まれたガゼボで優雅なアフタヌーンティーを。スコーン、チョコレートムース、パンナコッタといったアフタヌーンティーの定番メニューから、クエラピス、クエバギスといったインドネシアの伝統菓子、さらに手毬寿司やブルスケッタといったセイボリーまで、バリ式のしつらえで。心地よい風とともに午後のリズムをゆるやかに整えてくれます。
14:00〜16:00|アロマトリートメント

午後はスパで極上の癒しを。バリの自然から採れたアロマオイルで全身を丁寧にほぐした後は、フラワーバスへ。鮮やかなブーゲンビリアやバラの花びらが湯面いっぱいに広がり、まるで花の絨毯に身を委ねるよう。谷から吹き抜ける風と花の香り
に包まれ、五感が一気に解放されていきます。自然の香りと技に包まれた極上のひととき。
17:30|バレ・サケパット(サンセット・カクテル)

山の向こうに沈む夕陽を眺めながら、軽やかなカクテルで乾杯。一日の余韻を味わう贅沢な時間。
18:00〜|コースディナー

渓谷を望む開放的なダイニングで優雅なコースディナーを。バリの哲学「人・自然・神との調和」をテーマに、前菜の5種盛りに始まり、清らかなコンソメや3種米のリゾットなど、スパイスやハーブに熟知したシェフが確かな技術と感性で美しく仕上げたコース。中でも印象的だったのは、花々を供える「チャナン」から着想を得た野菜料理。鮮やかな盛り付けに祈りの文化が息づいていました。

ジャングルに沈む夜の静けさと、吹き抜ける夜風、灯りに照らされた食卓が、特別な一日の締めくくりを彩ります。一皿ごとに込められた物語と演出に、ただ食べるだけでなく、体験する感覚があり、ディナーそのものがバリ滞在のハイライトに。
「トリヒタカラナ〜人・自然・神との調和〜」
- 前菜–儀式
祭事を祝福する5つのごちそう
鳥の香草蒸し焼きのファルス、鳥と野菜の和え物、サーモンタルタル、ラムのサテー、バリのハーブパンケーキ - スープ−ムルカット(沐浴)
トマトとスイカのエッセンス ホタテのコンフィ コンソメ - リゾット−棚田の生活
3種類の米のリゾット しっとり焼き上げたスパイシーダック - 野菜−祈りの捧げもの(チャナン)
本日の野菜畑(ヤングココナッツ) 魚のタルタル ガドガドソースを添えて - 魚−海と山の対比
本日の魚(ソードフィッシュ)
凝縮した魚のブイヨン とびっこ ドラゴンフルーツのチャツネ ほうれん草 - 牛肉−母なる大地
バナナの葉でじっくり焼き上げたビーフと塩釜で仕上げた季節の野菜 - シャーベット−回復
現地の果物を伝統的なハーブを使ったレシピで - チョコレート−満月と新月
パリチョコレートを様々な調理法で カカオのデクリネゾン


Day3:朝の静けさと手仕事の余韻
07:00〜07:30|ウブドの谷の深呼吸

朝日が昇りはじめる頃、インストラクターのガイドで渓谷を見下ろすテラスへ。バリ式呼吸法を取り入れながら、森と一体になるように深く息を吸い込むと、体の内側まで清められる感覚に包まれます。朝霧の香り、鳥のさえずりや木々の揺らぎとともに次第に体が目覚めていく、まさに“自然が織りなす瞑想”のよう。
08:00〜|朝食

渓谷を渡る朝の光に包まれながら味わうのは、星のやバリらしいヘルシーで滋味深い朝食。南国フルーツプレートとそれを使ったフレッシュジュースから始まり、ナシゴレンやバリ式朝粥など土地の文化を映すメニューもあれば、日本食メニューもあり。体に
い食材やスパイスがほどよく効いた料理は、目覚めたての体を内側から整えてくれるよう。最後の朝にふさわしい、丁寧な一皿。
10:00〜11:00|バリニーズの手仕事体験(チャナン)

バリの暮らしに欠かせない、神々への祈りを捧げる花のお供え「チャナン」。その伝統的な手仕事を実際に体験できるワークショップ。椰子の葉を折り、色とりどりの花を丁寧に添えていく工程は、心を静め、自然への感謝を思い起こさせてくれるよう。完成したらリゾート内の祠にお供えし、旅の無事とこれからの幸せを祈ります。バリの精神文化に触れる体験は、滞在の余韻をさらに深めてくれるものに。
12:00|チェックアウト

穏やかな朝を過ごした後、名残惜しさを抱きながらチェックアウト。さっきまであれほど晴れていたのに、部屋を出るタイミングで突然のスコールに降られたのも今となっては旅の良き思い出。スタッフに見送られながら、あっという間にバリの喧騒に戻ってきます。
渓谷に抱かれた聖なるリゾートで体感した、自然・文化・祈りの調和。その余韻は、帰路の道中でも心の奥に静かに響き続けていました。
おわりに

静寂な明け方、ジャングルから立ちのぼる薄い霧。鳥のさえずりとともに聴こえてくるのは、遠くを流れる川のせせらぎ。時の流れがゆるやかに着実にほどけていくような、非日常のひとときがそこにはありました。

バリの大自然に抱かれ、人々の丁寧な暮らしぶりに触れ、祈りと共に受け継がれてきた文化を、肌で感じた2泊3日。ここでの体験は単なるリゾートステイを超えて、バリそのものに寄り添うような時間。
もし今、少し疲れを感じているなら、この日常から切り離されたウブドの渓谷に浮かぶ天空の宿が、そっと癒してくれるはず。
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Profile
渡辺 由布子
17歳から読者モデルとして多数女性誌に出演。6年間にわたってMBSラジオパーソナリティを務める。現在はヨガインストラクターの他、トラベルライターとして世界中を飛び回る。過去渡航した国は47カ国120都市。ハワイ留学、LA在住経験有り。現在は拠点を湘南に移し、全国各地を巡りながら、東京と行き来してデュアルライフを送る。
17歳から読者モデルとして多数女性誌に出演。6年間にわたってMBSラジオパーソナリティを務める。現在はヨガインストラクターの他、トラベルライターとして世界中を飛び回る。過去渡航した国は47カ国120都市。ハワイ留学、LA在住経験有り。現在は拠点を湘南に移し、全国各地を巡りながら、東京と行き来してデュアルライフを送る。







